研究概要

RESEARCH 幹細胞化の分子機構:(8)幹細胞化に伴う新規 DNA 合成の謎

(石川雅樹 助教:大学院生募集中

我々はヒメツリガネゴケ葉細胞が幹細胞化するときに、葉切断後、チミジン のアナログである EdU が取り込まれることを発見しました。そこで、S 期の進行に必要な DNA ポリメラーゼの阻害剤であるアフィディコリンを添加すると、EdU の取り込みが抑制されました。また、細胞周期制御因子 CYCD 遺伝子が、幹細胞化している細胞で発現することがわかりました。これらのことから、葉細胞が幹細胞化するときも、他の生物で見られる細胞周期再開と同様に、葉細胞は G1期で停止しており、切断によって細胞周期が再開し S 期へと進行するだろうと予想されました。ところが、1倍体世代である葉細胞の 切断前の DNA 量を測ると、ほぼ 2C なのです。ということは、葉細胞は S 期のほぼ終わりだけれども、一部だけ DNA 合成が終わっていない部分があり、切断すると、新たな DNA 合成がおこったあとで G2 期へと移行し、細胞分裂が起こるのではないかという仮説をたてました。こんなことってあるのでしょうか。

Ishikawa, M. et al. (2011). Physcomitrella cyclin dependent kinase A links cell cycle reactivation to other cellular changes during reprogramming of leaf cells. Plant Cell 23, 2924-2938.

Ishikawa, M. and Hasebe, M. (2015) Cell cycle reentry from the late S or G2 phase: implications from stem cell formation in the moss Physcomitrella patens. J. Plant Res. 128(3):399-405.